第29章 古語の奥深さ
それには作家小泉吉宏氏との出会いがありました。
小泉氏は高校生の頃からの仲間である作詞家芹沢類のご主人。
彼が源氏物語を漫画でわかりやすく描いた<大掴源氏物語 まろ、ん?>を執筆中で、作品の中で使われている古語や人物関係などがわかりにくくないかどうかを私達に読んでもらう事で検証しようとしていました。
まだ未完成のそれを一から、わからない所は聞きながら読ませてもらっている内に、その絵巻の雅な面白さにいつの間にか引き込まれてしまい、日本語の美しさ、それも古語の奥深さに惹かれ、それからと言うもの高校生以来となる古語辞典などを買い求め源氏の世界や古語の世界の紐解きが始まりました。
時を同じくして、木戸とのコーラスワークを気に入ってくださっていたプロデューサーさんから、二人の声を駆使して花をテーマにしたアカペラを作りたいと言うお話をいただきました。
花といえば<桜> 木戸が花びらの舞う様を<さ.く .ら.>の言葉でループにした幻想的な曲を作ってくれたので、私としてはタイムリーに源氏の世界を思い描きながら少し雅びに歌詞を書いてみる事にしました。
<さくら> (夏恋花 M−1)
さくら さくら さくらの花が咲く
さくら さくら さくらの花が咲く
一夜の夢枕(風に誘われ) 春偲ぶせせらぎ(揺れる)
はかなく無常に舞う花吹雪
月に照らされ(幾千の世) 見守りし時を(超えて)
闇に(きらめく) 秘める(浮世の) 思いの果て
さくら さくら さくらの花が散る
さくら さくら さくらの花が散る
そして出来上がった「さくら」が東芝のコンピレーションアルバム< Feel New Asia>に収録される事となり、<Breath by Breath>のプロデューサーである矢島マキさんがその時書き下ろしてくれた「夏恋花」がNHKのみんなの歌に起用され、アルバム制作までとんとん拍子に話が進んで行ったのです。
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