広谷順子
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第26章 オアシス

その頃心のオアシスとなっていたのが下北沢にあった”弐代目”
カウンターだけの狭いお店でしたが仕事帰りのミュージシャンが夜な夜なおしゃべりして 喉を潤しお腹を満たす溜まり場となっていました。
スタジオだけでは知りえなかった人柄や逸話に触れて益々楽しいミュージシャンライフ。

その頃知人の勧めでスキューバーダイビングのライセンスを沖縄で取得しました。
これがまた私の人生観に少なからず影響をもたらします。
海の中の無重力感覚、水族館でしか会った事のなかった色とりどりの魚たちが目の前を泳ぎ 自然の地球の一部に身を委ねているような心地よさにあっという間に虜になりました。

あれはタヒチへ行った時のこと。
ガイドさんの英語での説明があまり良く聞き取れないまま海中へ。
穏やかなダイビングだわと思っていた時、何かが足に触る感覚がありました。
誰かのフィンかな?と思っていた時、先を行くガイドさんが振り向いて私を見る目が 大きくまん丸に開きました。
水中マスク越しなので余計に大きく見えるとはいえ、私の方を指差して 上へ向けて親指を立てる。
私は咄嗟には何のことかわからずとりあえずOKのサインを返す。
するとものすごい勢いでガイドさんが私の方へ向かってきて 私のタンクをグイッと持ち上げ浮上させました。
何となく身体を何か柔らかいものがスルリと抜けたような感覚はありましたが、ダイビング終了後ガイドさんが言うには私はウツボに絡まれていたそうです。
私の身体と同じくらいの大きなウツボの顔は今にも私に噛みつきそうに 口を開けていたとか。。
親指を立てたのはグー!じゃなくて浮上せよの合図だったのです。 ウツボは水面までは上がって来ないのでスルリと抜けたのだそうです。危なかったです!
そこはウツボのポイントで改めて下を覗いてみるとウツボが右往左往しているではないですか! それを見て初めてゾッとしました。

インペクとは

ミュージシャンのスケジュールを組んだり色々とお世話してくれるマネージャーのような人のこと

仮歌とは

仕事で忙しいアーティストに変わってリズム隊のレコーディングのために歌ってあげる。
いずれは消えてしまう儚いヴォーカル。

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