広谷順子
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第43章 ゆらぎの世界

2010年8月15日 <第九帖 闇よ闇夜よ>

第八帖がキャパの大きいライブハウスだったので、今回はもっとこじんまりと、そしてお盆の送り火を灯すように、ほのかな灯りの中でしっとりとやってみたくなりました。
会場の入り口の階段には竹筒にキャンドルを、ステージにも小さな間接照明をいくつもつけて、静かなゆらぎの世界を作りました。

子供の頃の夜は、とても暗くて夕暮れから薄明かりの中、家路を急いだり闇の中にもののけを感じたり、そしてその中で満天の星が落ちてきそうに怖かったり、そんな感性を広げられる世界を作ってみたかったのです。

当日、間違って迷い込んで来られた目のご不自由な方が1名いらしたそうなのですが、最後まで真剣に耳を傾けてくださり、いたく感動してお帰りになったと伺いました。
完全なる闇の中で、私達綺羅はどのように映っていたのでしょう、、
直接お話を伺ってみたかったです。

おかげさまでスタッフの努力もあり、ライブはいつも満席。
そんな中 ”こじんまりと” と言うのは少し無理があったでしょうか、お客様にはかなり窮屈な思いをさせてしまったので、次はゆとりのある会場でいよいよ第十帖と思っていた矢先、 またまた乳ガンが見つかってしまいました。今度は右側に、、

定期検査で石灰化と診断されていたものが、いつの間にか癌化してしまっていたようで、転移ではなく全く別の種類の乳ガンと言う事で、すぐに手術を受ける事となりました。
これで人生5度目の入院です。
5度目ともなると入院も慣れたものですが、今回は前回よりも進行していたので、リンパまで切除してのリハビリ。
また腕が上がらない。
これまた回復力を試されているかのような日々でした。

そして2011年
あの東日本大震災が起きた頃、ちょうど放射線治療に通っている時でしたが、音楽業界は静まり返り、私達にも出来る事はただ、祈りながら微々たる義援金を届けたり、せめての心の癒しにと防災FMに綺羅の「どこかで春が」を届けたり、、
そんな事しかできない自分達がとてもちっぽけに思えてしまう中、今は治癒に努める時と、ただただエールを送りながら、私も復興と共に元気にならなければと、被災した皆さんとは比べものにならないですが、頑張る勇気をいただいていました。

<どこかで春が> (時のなごり 下巻 M−7)
どこかで春が生まれてる どこかで水が流れ出す   
どこかでヒバリが啼いている どこかで芽の出る音がする   
山の3月そよ風吹いて どこかで春が生まれてる〜
(歌詞 百田宗治)

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